L1m-netで不動産も守る
地域と連携して高齢者が借りやすい環境を

見守り&かけつけサービスで
高齢者の住まいをサポート

創業以来50年以上、東京・八王子市を拠点に不動産業を営む株式会社住宅工営。業界では珍しく福祉事業も行う同社は、2019年に高齢者の住まい探しを専門とする「CADDY care(キャディケア)」を立ち上げ、多摩地区を中心に高齢者や障がい者向けの賃貸住宅や老人ホーム、介護施設紹介を行なっています。その上で、「高齢者の一人暮らしに”見守りシステム”は不可欠」というのが、同社の福祉事業部で部長を務める望月洋さん。高齢者向け賃貸業務を推進するにあたり、いろいろな”見守りシステム”を試した結果、「L1m-net(エルワンネット)」の導入を決めたのは「私たちが求めるニーズに合わせてカスタマイズしてもらえる自由度の高さ」と望月さんは話します。

「高齢になると家を借りにくいという現実は、貸す側のリスクを考えるとやむを得ないでしょう。ただ、それでいいのかという葛藤がずっとありました。そこで弊社では、貸す側も借りる側も不安を少なくする仕組みとして、高齢者や障がい者が安心して入居できる環境を整えていきました。そこに欠かせなかったのが、”見守り&かけつけサービス”なんです」

 住宅工営では、2021年から高齢者向けの住まいや入居後のサポートに「L1m-net」を活用した”見守り&かけつけサービス”を提供しています。毎日、入居者端末機器(L1mボタン)を押してもらい、生存確認を取る。望月さんは、「まず、これが非常に大事なポイントだった」と言います。

L1m-netの活用事例、今後の展望を話される望月さん

利用者も管理者も負担少なく
コミュニケーションが取れる

「高齢の方がなぜ家を借りにくいかというと、やはり孤独死のリスクが高いという理由が大きい。自宅や賃貸物件で亡くなられて発見が遅くなると、特殊清掃を入れなければならなくなり、不動産の価値が下がるリスクもあります。それをいかに回避するのかを悩んでいて、必要に応じて入居者の安否状況を把握したいのですが、カメラやセンサで監視するような体制は取りたくなかった。そんな私たちのニーズに『L1m-net』の見守りシステムは、ぴったり合いました。利用者も管理者も負担がかからない程度でコミュニケーションが取れて助かります」

 「L1m-net」は、端末機器(L1mボタン)を通じてサポートが必要な利用者と支援する管理者の双方向のコミュニケーションを支えるシステム。管理者があらかじめ設定した音声メッセージを流したり、利用者が専用カードを置いてボタンを押すだけで管理者に頼みごとや自分の状態を届けることができます。スマートフォンなどITに不慣れな利用者でも使いやすいようにするだけでなく、支援する側に立つ管理者の作業負担を軽減するのにも有効です。

「例えば、ごみ収集日に『今日は燃えるごみの日です』というメッセージを選べば指定日に自動で流れるので、管理する担当者は楽だと思います。流す時間を個別に選べるようにしたいなど、リクエストをお伝えすると、『L1m-net』開発担当の方がすぐに対応してくださるのも心強いですよね」

従来の”見守りシステム”ではダメ
もう一歩踏み込んだ機能がほしい

 実は望月さん、最初に「L1m-net」のデモを試した時に「例えば、週に一度の電話確認や電気使用量の変化、あるいはアラートを家族に知らせる機能などの”見守りシステム”だけでは、不動産を扱う私たちとしては不十分」と感じたそう。利用者がボタンを押したり、カードを置くと管理画面に利用履歴が残るので、管理者は利用者の状況を把握できますが、利用履歴が更新されていない場合はどうなのか。「安否確認に向かう必要があるのかどうかを知りたかった」と望月さんは振り返ります。

「入居者が単純に留守にしているだけなら、利用履歴が更新されないのは当然ですよね。ボタンを押し忘れているだけなのか、在宅しているけれど押せない状況なのか、それとも旅行で留守なのか。それを把握できないと私たちが目指す”見守り&かけつけシステム”が成り立たないんです」

 これは有事の際に、入居者の元にすぐにかけつけられる不動産業者ならではの視点。万が一、部屋で亡くなっていたとしても、一刻も早く見つけることが肝要だからです。

「ですから、私たちの“見守り&かけつけサービス”を実現するための要望を伝え、『L1m-net』に入居者が在宅しているのか、不在なのかがわかるような新しい機能をつけていただきました」

不動産管理をする側には必要
新たな仕組みの「外出(おでかけ)カード」

 このような経緯で誕生したのが、『外出(おでかけ)カード』です。

「利用者が在宅されているのか、外出されているのかを把握するために作っていただいたカードですが、当日の端末機器(L1mボタン)操作の安否確認と併せて状況判断に役立てています。例えば、利用履歴を確認できない期間が数日間あると、部屋で亡くなっている可能性もあります。旅行や入院などで不在なのか、それとも異常事態が発生しているのか、それを把握するために、入居者が外出する時は『外出(おでかけ)カード』を置いてもらいます。私たちとしては、24時間以上利用履歴がなくても、入居者が”自宅にいない”とわかればひと安心なので」

 管理者画面(L1mシステム)には、当日の端末未使用者を知らせる『かけつけアイコン』を追加。利用者に持病がある、または体調不良であるなど、注意が必要な方をピックアップしておくことで、重要度を上げた見守りが可能になります。

「『外出(おでかけ)カード』が使われず、入居者からの利用履歴が24時間以上更新されない場合は、ご本人に連絡した後、緊急連絡先に連絡を取り、かけつけの判断を仰ぎます。緊急連絡先が無い方は、私どもの判断でかけつけるお約束をしております」

 高齢者のサポートと同時に、不動産管理をする側もしっかり守っていく。万が一に備え、地元のタクシー会社や病院とも連携し、”見守り&かけつけ”体制をしっかり整えています。

「”見守り&かけつけサービス”において『外出(おでかけ)カード』は、利用者の外出を知るためだけでなく、見守りを提供する側の必要な判断基準と感じております」

「相談カード」を介して
声かけしやすい関係を築いていく

 住宅工営で取り扱うカードは、「外出(おでかけ)カード」のほかに、もう1枚、「相談カード」があります。入居者がこのカードを端末に置くと、相談したいという意思表示が管理者に伝わります。「相談カード」が置かれたら、担当者はカードを使った入居者に電話をして用件を聞く、という流れになるため、相談の敷居が低くなります。

相談カード利用イメージ

「付き添いやお手伝いなどサポートが必要な方の介護保険適用外になっている生活支援サービスが中心ですが、その利用だけではなく、『誰に聞いたらいいかわからない』という場合に、まずは『相談カード』で私たちにファーストコンタクトしていただけるようにしたい。

それが『L1m-net』で実現しているので、これからも役立てていきたいと思っています」

八王子市で、高齢者を重点的に支えるサポートサービスの一端を担う住宅工営。ただ ”住まいを提供する” だけではなく、入居者同士が交流を深められるイベントや役に立つ情報提供の場作りになれば、と地域と連携しながら福祉事業に注力しています。ゆくゆくは「高齢になっても安心、賃貸住宅でも看取りができるような社会になれたら」と次の目標を見据えています。

 

【取材先】
株式会社 住宅工営 福祉事業部 部長 望月 洋(もちづき よう)さん

不動産業界としては珍しく福祉事業部を設置し、八王子市の「はちおうじ人生100年サポート企業」に登録。周辺地域の福祉事業サービスや関連企業、病院、施設等と連携しながら、高齢者向け住宅サポートに注力している。

株式会社 住宅工営
https://jutakukouei.com

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